アマンダおばさんの
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6月23日(火)

動物愛護法の改正から3年

 動物愛護法の改正が実施されてこの6月で丸3年が経った。動物虐待が野放しになっている現状にようやく政府が乗り出した施策であろう。時折知る悲惨な報道に目や耳を覆いたくなるのは私一人ではないはず。いきつけの救急動物病院の話でも、今、飼い主もいろいろで、幼児虐待があるようにワンコの虐待も年々増えているそうだ。よく瀕死のワンコが運び込まれて来るとのこと。
 ワンコの純粋で崇高な魂を知れば知るほどおぞましい人間の犠牲になっている一部のワンコ達には深く心痛める者の一人である。
 一方で生き物を扱う事がいかに難しいかを思う。ワンコを20数年続けてきただけの体験ではあるが、それでもどんなに注意して世話をしても予想しない事故や疾患は起こりえる。40年以上プードルに携わっている先輩との四方山話で「何年やっても事故は起きますね。」と伺った事があるが、やはりどれだけの失敗と経験を踏んだとしてもワンコ業はいつまでも初心者なのだ。ブリーディングをするにはワンコそのものの習性を知るだけではなく、検便や投薬、疾患、疾病を含む獣医学、その他遺伝のこと、法律、様々な分野の知識及び経験、また規定に準じた設備などが必要とされる。改正された動愛法では従来のものに変り専門の勉強をして資格を取得した者、あるいは長年のブリーディング経験者以外の繁殖を規制しているが、当然ではないだろうか。妊娠はワンコにとってかなりの負担になる。どんなに注意をしてもトラブルは免れない。妊娠中に母犬の状態が悪くなりお腹の子もろとも亡くなった例が今までにいくつかある。難産で、生まれたばかりの子犬を残して亡くなった母犬もいた。帝王切開なら・・・と考える向きもあろうかと思うがあにはからんずや、知人のブリーダーは小さいチワワの帝王切開で3回も親子丸ごと亡くしている。ベテランブリーダーであっても然りなのだ・・。
 実際妊娠及び出産は千差万別で、有る程度のルールはあったとしても何百回のお産の何百回がその都度違っている。先日も小さいお母さんの出産があった。予めレントゲンで子数、大きさ、位置を確認して準備万端整ったつもりだ。予定より3日遅れたのが気がかりではあったが。長時間のガサガサ、ウンチングスタイルがあってやっとのこと胎膜に覆われた胎児の頭が見え隠れした。胎児で一番大きいところが頭だから頭が出れば出そうなものだがそう簡単にはいかない。頭を引っ張ったのでは頚椎が切れてしまう。あの手この手で裏技を使うが一向に進まない。陣痛が弱いからだろう。30分経過した。ふと見ると、陰部から顔が出ている子犬の舌の色が次第に白っぽくなってきた。仮死状態に突入。早く出さないと・・・汗とともに焦りが出てきた。これだから小さい親のお産は嫌なのだ・・などと思っても後の祭り。運を天に任せ陣痛に合わせて胴体を引っ張った・・・とラッキーなことにうまく出る事ができた。しかし子犬は微動だにしない。急いで心臓マッサージをするが一向にパクっといわない。電気ストーブの前で、必死でマッサージをするとやっと子犬が1言「パクッ」といった。やがて何秒かに一回パクッと言い30分も続けると感覚が短くなってきた。体をのけぞらし生まれて1時間経過後何とか助かりそうだ、と思う間もなくふと母犬を見ると次の子が生まれる気配。同じウンチングスタイルに引き続き頭部が出てきた。今度は先の子より大きい(汗)。前が高校級なら今度は大学級だ(ちなみに大きい胎児の逆子は大学院級)。陣痛が来ているのにぜーんぜん進まない。初め赤みのあった子犬の舌はやがて真っ白になり、そして指で触れても反応なし。骨盤の出口に肩が引っかかっているのだろうか。陰部から指を入れて位置を修正した。が、やがて全く反応がなくなった。「これはやばい」「何が何でも出すしかない」とバラバラ事件覚悟で引っ張った。途中で宙ぶらりんにするわけにはいかないのだ、陣痛が来るのを待っている暇はない。親犬を抱きかかえ、子犬を引っ張った。親も必死だ。よほど痛いのだろう「うーん、」「きゃーん」と唸ってやっとのこと、子犬が出た。引っ張られて伸びきった子犬は全くもって死んでいるようだ。パクッとも言わない、ただの屍のように見える。たぶんダメだろうと思いながら、やれるだけのことはやろうと祈る気持ちで飲み込んだ羊水を吐き出させ、マッサージをした。ここまで育った命ある子犬を死なせては可哀想、という人命救助(犬命救助)の思いが蘇生の手を動かす。体を温めながら神経を集中して心臓マッサージをする。普通子犬が生まれると真っ先に臍の緒を切るのだが、この場合切っている間に手遅れになる。胎盤と臍の緒をつけたままでマッサージをした。見ると短パンをはいていた私の太腿は血と胎盤の緑でべっとりだ。まるで私自身が出産をしたかのようだ。そして、ほとんど希望を持っていなかったにも関わらず不思議な事に何分後かに弱弱しくパクッといったのだ! だが安心は出来ない。このパクッはお別れのパクであることが多い。死の旅立ちの痙攣だ。まるで「おさらばです。」という挨拶の言葉のようにも思える。そのあとが続くか否かで生死が決まるのだ。マッサージを続けると、「もうだめかな〜」と諦めたころに「パクッ」といった。「こりゃ、いけるかなー?」半信半疑で手を動かし続けると・・・またまた忘れた頃に再度「パクッ」といった。「大丈夫かも!」マッサージの手をそれまで以上に動かすと、少しずつではあるが舌の色がピンクに、そして赤色に変わってきた。1時間近くも経っただろうか、子犬は体をのけ反らし、かすかに「ミー」と言った。三途の川原から戻って来たのだ。よかったねー。危機を脱した子犬2頭は、後から難なくストンと生まれた3頭目と一緒に暖かい保育用ベッドに移された。その後子犬達は何事もなかったかの様に母犬のおっぱいを享受し順調にそしてむっちりと育っている。いつか迎えてくれるだろう温かいファミリーの一員になる事を夢見ながら・・・。
 動物愛護法で云々されるまでもなく、こと生き物の生命に関わる繁殖を誰もがやって良いとは思えない。例え多くの失敗から学んだ経験があったとしても難しい所作だからだ。一般のご家庭ではできればオスは去勢を、メスは避妊する事をお勧めする。子宮内膜炎、子宮蓄膿症、卵巣脳腫、乳癌、子宮癌他子宮由縁の疾患が回避できる。また、オスも前立腺癌が防止でき、肛門周りが綺麗に維持でき、オス由来の習性が避けられるなど良いこと尽くめだ。それに伴い、何より短命に終わらせず平均寿命まで全うできる可能性が大きくなるメリットがある。

 余談として、わたくしの見解であるが、「犬に癒されたくてワンコを飼いたい」という姿勢には賛成できかねる。その程度の心構えでワンコを飼ってはもらいたくない。自分の子供と置き換えて考えていただきたいのだ。自分の子供だったらこの場合どうすべきかと。「この子から愛をもらいたい」、ではなく、「この子をどう幸せにしてあげられるか」を是非考えていただきたいと思う。
 とにもかくにも、「ワンコは神様からの預かりもの」、という気持ちでこのいたいけなクリエイチャーを共々に慈しみ愛していきたいものである。



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