アマンダおばさんの
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2016年10月
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10月13日(木)

<健診から見えてきたこと>

 主人は私より2歳年上。年齢からして主人の方が先に亡くなり、私は後に残るとばかり思っていた。「主人が生きているうちは大切にしよう」と思っていた矢先、先月受けた健康診断の結果が送られてきた。主人は問題なしだったのだが、私は便潜血反応の検査結果がプラスと出ていた。初めての悪い結果に「これって、大腸癌の恐れありっていうこと?」と思うと急に目の前が真っ暗になった。だとすると、あと少ししか生きられないのだろうか、飼っているワンコ達はどうなるのだろう、主人は? と考えると、奈落の底に突き落とされた気分になった。母は89歳まで生きたので、あと20数年は大丈夫と未来予想図を描いていたのに、もう人生が終わりになるのかと思うと急に寂しさを覚えた。
 主人に検査の結果を知らせると、癌かもしれないというのにやけに落ち着いた様子。そればかりか「ところであの件はどうなった?」等と、違う話題を振ってくる。そうした主人の反応に私は、「何だ、わたしの事心配してくれないのね」と少しムッときた。だが、今までもそうであったように、突然の出来事があると尚一層冷静になり、落ち着く癖のある主人であることを思い出した。
 「T子さんに聞いてみたら」とボソッと一言。「そうだな~、長男は消化器専門だが外科だし、それに勤務中あんまり心配をかけたくない。嫁は毎日のように胃カメラや大腸カメラでの内視鏡検査をやっている内科の専門医、主人の言う通り嫁のT子さんに聞いてみよう」と早速メールを入れた。
 すると子供たちを寝かしつけてからだろうか、夜に返信がきた。「便潜血反応検査で大腸癌が見つかるのは2、3%程度です。あとはこういうことが考えられます、と、癌以外に考えられる原因をいくつか列挙してくれた。そして、何もない確率の方がずっと高いので、あまり心配されず内視鏡検査を受けに行かれれば良いかと思います」と、締めくくっていた。気を紛らわそうと思ってか、「追伸;昨日送っていただいたおいもは大学いもにして子供たちといただきました、ナシもとってもおいしかったです。有難うございました!」と追記してあった。
 それを読んだ私は、胸のつかえが少し取れ、と同時に嫁の優しさに、思いがけずどっと涙があふれ出てきた。
 私が仕事で忙しいと思い遠慮していた嫁だったが、「もっと孫と会う機会を設けてほしい」と言うと、それ以来直受直行、素直に実践に移してくれている嫁。孫たちのお泊り会や川遊びを企画してくれたり、10月にはリンゴ狩りを兼ねて家族一緒の温泉旅行にも誘ってくれている。以前よりも密にメールや電話をくれるようになり、嫁の素直で優しい心使いに癒されるこの頃だった。

 翌朝、いつもは頼まれてからやる道路際の花の水やりを率先してやっている主人の姿があった。一段落してテーブルに着くと、「コーヒー・・・飲む?」の主人の言葉が心なしかいつもより優しく感じられた。
 ウニ好きな私に、「今度ウニのスパゲティー作ろうと思うんだけど、食べたい?」と聞く主人。「うーん、食べたい!」と言うと、「仙台駅前の朝市(あさいち)ならまだ生うに売っているかもしれないなー」と早速買いに行く段取りをしている主人だった。
 「T子さんから夜、検査のことで返信メールが来ていたよ」と言うと、前のめりになって「それで?どうだって?」と聞く主人。「何だ、やっぱりわたしの事、心配してくれてたんだ。」と思うと嬉しくなった。花の水やりもウニのスパゲティーもそのせいなのだ、と納得だった。
 翌日嫁から事情を知らされたのだろう、単身赴任中の長男からもメールが届いた。「早めにカメラ検査受けてね。結果わかったら教えてください」と。いつもながらに短い文ではあったが、文面に込められた、そこはかとない長男の愛情が感じられた。余計な心配をさせるといけないので他の子供達には伝えていないが、言えばきっと即、心配電話やお見舞いメールが来るに決まっているのだ。
 そうした時、私は、今までどれだけの愛情で主人や子供達、そして嫁から支えられていた自分であったかを思い知った。
 人は一人で生きてゆくことはできない。いま自分が生きていられるのは、自分の周りや知らない人たちに、生活の様々な部分で支えてもらっているからだ。
 この幸せを思う時、私も人に与えられる人間にならなければと思った。

 あれから1か月、予約の大腸内視鏡検査日まで不安な気持ちで過ごした。そして、少々辛い下剤の前処理をして翌日検査を受けた。結果は・・・ポリープ、癌とも マイナスだった!
  もう少し生きられると知った今、余力のあるうちにワンコを何とかしなければと思う昨今である・・・。




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